まぼろしの都のインカたち
まぼろしの都のインカたち (旺文社創作児童文学)

「はるかなる黄金帝国」の続編。

クシとチャスカの息子チェハンの視点で、ビルカバンバの谷に落ちのびたインカ族の およそ30年に及ぶスペイン人たちとの戦いが描かれる。

タワンティンスーヨ帝国最後の都ビルカバンバは、四代の皇帝の下、40年もの間スペイン人の侵入から守られ、最後はインカ族自らが宮殿に火をかけ アマゾンの奥地に逃れたため、未だその正確な所在地は不明だという。(※本書が書かれた当時は不明だったが、後に発見されたらしい。)




アタワルパの処刑から8年後の1941年、フランシスコ・ピサロは リマの自宅で暗殺された。

その同じ年、12歳になったチェハンは成人式を迎えようとしていた。

クシ亡き後、チャスカに約束した通り、ワマンはチェハンの父親代わりとなり、自分がヤチャイワシ(知識の家)で学んだことの全てをチェハンに教えた。

両親が 結婚と同時に貴族の身分を捨てたため、農民の子として育ったチェハンだったが、伯父のお陰で貴族にしか得られない知識を身に着けることができたのである。


インカ族の貴族として成人式を挙げ、タワンティンスーヨ帝国を取り戻すために皇帝と共に働きたいと望んだチェハンは、ワマンに連れられ ビルカバンバの都を目指す。

成人式の後、一旦はクスコに戻ったチェハンだったが、皇帝のそばに仕えるため、チャスカと共にビルカバンバの都で暮らす決意をするのだった。


マンゴ二世と その皇子であるサイリ・トパック、ティトウ・クシ、トパック・アマルー。

サイリ・トパック、ティトウ・クシと齢の近かったチェハンは、彼らと兄弟のように育ち、次々と代替わりする皇帝のそばに仕えながら、タワンティンスーヨ帝国の最期を見届けることとなる。





実質上、最後の皇帝とされるアタワルパが処刑された後も、インカ族がスペインに対し 40年にも亘って激しい抵抗を続けたこと、そしてそれまで皇帝の血筋が続いていたことを、前作「はるかなる黄金帝国」のあとがきで知りました。

続編があることを知ったのはずいぶん後になってからで、既に絶版になっていたのを これまた古本で探して入手。


本書が刊行された1982年当時、ビルカバンバは幻の都だったため、作者はエスピリトゥ・パンパ(スペイン語で「幽霊の平原」の意)をビルカバンバと想定する説を採ったと、あとがきにあります。


前作同様、史実を軸にした創作でありながら その情報量は大したもので、そのへんの教養番組なんか軽く凌いでしまうほど。

スペイン軍との激しい戦闘、敗北、それに続く皇帝たちの逃避行も 皇帝の最期も、淡々とした筆致で容赦なく描かれ、児童書だからとなめてかかると頭をガツンと殴られたような衝撃を受けます。


ビルカバンバの物語は、そのあまりに悲惨な結末ゆえに土地の民間伝承にすらほとんど残っていないのだとか。

それをここまでの物語にするための資料集めは、当時は今よりもっとたいへんだったはずで、まずはそれが大仕事だっただろうなと思います。



帝国を取り戻すため、スペイン人を油断させ 時を稼ぐために、スペイン国王の臣下になるという屈辱も甘んじて受け入れ、辛抱強くその時を待ち続け、ようやく訪れた好機を前に無念の死を遂げたサイリ・トパック。


弟とは正反対に、スペイン人に対して強硬な姿勢を見せたものの、やがては弟と同じように 時を稼ぐため、スペイン人への譲歩を重ねた末、兵を挙げる寸前に病死したティトウ・クシ。


そして、スペイン軍との戦いに敗れ、捕らえられ処刑された 最後の皇帝トパック・アマルー。



急峻な地形を生かした天然の要塞 ワイナ・プカラが陥ちた時、帝国の滅亡はもはや決定的なものとなります。

それでも、必ずもう一度兵を挙げると誓い、そのためにこそ今は逃げるのだと皆に告げるトパック・アマルー。

自ら宮殿に火を放ち、ビルカバンバを後にした彼らの その後を知っているだけに、ここから先は読むのがかなり辛いのですが…



作者は史実を捻じ曲げることなく、でも「もしかしたらこういうこともあり得たかもしれない」と思えるギリギリのところで、チェハンと読者に希望を残して 物語を結んでくれます。


この物語には他にも魅力的な登場人物が大勢いて、中でも わけあってビルカバンバの宮殿に引き取られ、チェハンたちと暮らすことになるコイユールとピリンクの姉弟はチェハンの人生に大きく関わってきます。

ワマンの友人ワヤパックの妻ミスキも、ラスト近くで意外な活躍をみせてくれる重要人物。

読者には「約束を守らない、黄金に目が眩んだ卑怯者」のイメージしかないスペイン人の中にあって 信義に厚い司令官ヴィクトリオが印象的でした。



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[2011/12/07 17:06] やなぎやけいこ | トラックバック(0) | コメント(0) | @
はるかなる黄金帝国
はるかなる黄金帝国 (旺文社文庫)

インカ帝国末期、最後の皇帝アタワルパと、彼が最も信頼した友であり臣下であった青年クシを中心に、南米に栄華を誇った黄金の国が スペイン人の侵略により崩壊していく様子が描かれる。


西暦1500年頃、タワンティンスーヨ(インカ帝国の正式名称)の首都クスコ。

インティ・ライミの祭り(冬至を祝う太陽の祭り)の明け方、皇帝に仕える若い貴族 ルーミとミカイ夫婦の家の前に、赤ん坊が捨てられていた。

上等な布に幾重にも包まれた、生まれて間もない男の子だった。

一年前に子どもを亡くしていた二人は、その男の子に「クシ(喜び)」と名付け、自分たちの子どもとして育て始める。


その後、二人には男の子と女の子が次々に生まれ、男の子は「ワマン(鷹)」、女の子は「チャスカ(明けの明星)」と名付けられた。


チャスカは生まれつき片方の目が見えなかったが、まるでその代償のように不思議な力を持っていた。

はるか遠くで起きた出来事を知ったり、予知夢を見たり、星や月を見て未来を予言するのである。


この三人の子どもたちを、ルーミとミカイは 分け隔てなく愛情込めて育てた。


月日は流れ、クシが十歳、ワマンが八歳になった年、二人は貴族の子弟のための学校「ヤチャイワシ(知識の家)」に通い始める。

そこでクシが出会ったのは、ワイナ・カパック皇帝と側室の一人であるキートの王女との間に生まれた皇子アタワルパだった。





小学生の頃に友だちに借りてたった一度読んだきり。なのに、強烈に印象に残った本でした。

アタワルパ、クシ、ワマン、チャスカという名前をずーっと覚えていたほど。

インカ帝国に興味を持つようになったのも、この本がきっかけだったと思います。

その後、五年生の国語の教科書の最後にナスカの地上絵(たぶんコンドルかハチドリ)の写真が載っているのを見て、鳥肌が立つほどの感動を覚えました。

航空技術の発達により初めて発見されたというナスカの地上絵もペルーにあるのだと知って大興奮。

「この絵が何のために、そしてどうやって描かれたのか、想像して物語を作ってみましょう」という課題にも大はりきりで取り組んで、満点をもらうほどの熱の入れようでした。


ナスカの地上絵は、インカ帝国の時代よりもずっと前に描かれたものですが、どちらも未だ多くの謎に包まれており、憧れと興味は尽きることがありません。


文字を持たなかったインカの、スペイン人の侵略により滅ぶまでの記録は 全てスペイン人によるもの。

「征服者側による一方的なものであるのは当然」と、作者は自分なりのアタワルパ像をこの物語に描き出しました。


「どうして、道は一本しかないのだと決めてしまう。おまえが選んだ道だけしかないのだと?
結果を恐れてやってもみないのは、弱虫だ。」



クシを叱咤するアタワルパのこの言葉が、作者の描きたかったアタワルパ像を象徴しているように思えます。


自分たちが実の兄妹ではないと知ったクシとチャスカのそれぞれの苦悩や、その後のメロドラマ的展開も交えつつ、アタワルパとクシの友情や、ピサロをはじめとするスペイン人たちの卑劣さ残忍さ、それに抗し切れなかったタワンティンスーヨの悲劇が克明に描かれた 児童文学の秀作。


昔読んだのと同じハードカバーを古本で探して入手しました。

Amazonには旺文社文庫版の書影しかなく残念。
ハードカバーの表紙のほうがカッコいいのに~


※いつの間にかハードカバーの書影がUPされてました。(2011年4月12日追記)

ハードカバーはこちら↓

はるかなる黄金帝国 (旺文社創作児童文学)はるかなる黄金帝国 (旺文社創作児童文学)
(1982/06/20)
やなぎや けいこ

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[2011/11/25 15:55] やなぎやけいこ | トラックバック(0) | コメント(2) | @
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