銀のうでのオットー
銀のうでのオットー (偕成社文庫 (3110))

群雄割拠の中世ドイツ、ドラヘンハウゼン城(竜の館)に住むコンラッド男爵は、男爵とは名ばかりの、略奪と搾取によって一族郎党を養う騎士でした。
心やさしい男爵夫人はそんな夫の略奪行為に胸を痛め、やめてくれるように懇願します。


妻の願いを聞き入れることなく略奪を続ける男爵は、ある日深手を負って帰還し、彼が死んだと思い込んだ男爵夫人は絶望のあまり倒れました。
夫人はほどなくして男の子を産み落とし、その子に「オットー」と名づけて息をひきとります。


オットーは、母の伯父である僧院長に預けられ、十二歳まで戦いの日常とは程遠い僧院で修道僧たちに育てられました。


私は、この物語の中で、オットーが過ごしたセント・ミカエルスブルクの僧院での日々がいちばん好きです。


少し知恵おくれの若い修道僧ジョンは、赤子のオットーのそばを片時も離れず、世話をしました。
梨の木陰で赤子を抱いて座り、誰にもわからない子守唄を歌うジョン。

オットーは彼が大好きで、成長するにつれてその絆はますます強くなります。
高い鐘楼の屋根の下に寝転んで、ふたりにしかわからない不思議な物語を紡ぐ、その光景のなんと平和なことか。


ジョンは心の眼でふしぎなものを見て、それをオットーに語り、
僧院長は、聖者や天使たちの描かれた、宝のような書物をオットーに貸し与えるのでした。


この先オットーに科せられる過酷な運命とは対照的な、静かで優しい日々です。


十二の歳に、オットーは城に連れ戻され、否応なく戦いに巻き込まれてゆきます。
何代にも亘っての敵同士であったトルツ・ドラッヘン城(竜殺しの館)の当主、ローデルブルク家のヘンリー男爵に捕えられたオットーは、右腕を切り落とされ、人質となって幽閉されてしまうのです。


この物語が本当に素晴らしいと思うのは、オットーが助け出された後、皇帝ルドルフに謁見する場面です。
右腕を失ったオットーを見て「ローデルブルクの者たちは、そなたの失ったものは銅貨一枚、麦一粒に至るまで償わねばならぬ」と怒りを露にする皇帝。
それに対してオットーは、竜殺しの館の、まだ幼いやさしい姫のことを思い「どうかその娘に何事も起こらないように」と願うのです。


憎しみの連鎖を断ち切ったオットーは、銀の義手を失った右腕の代わりとし、やがては皇帝の信頼厚い廷臣となります。


銀のうでは、鉄のうでにまさる。


皇帝ルドルフがオットーに与えた家訓です。
決して剣を執ることのないオットーの「銀のうで」に対し、「鉄のうで」とはあらゆる武器、あるいはそれに付随する暴力を指すのでしょうか。


美しく成長したローデルブルク家の姫、ポーリンと再会するラストシーンには胸が震えます。


作者ハワード・パイル自身の手による精緻な挿絵も素晴らしい、大好きな物語です。


Amazonには偕成社文庫版のデータしかありませんが、私の手元にある元版は、学研の「少年少女・新しい世界の文学」というシリーズの中の1冊です。


学習研究社 昭和42年7月30日発行
ハワード・パイル/作・画
渡辺茂男/訳


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テーマ:児童文学・童話・絵本 - ジャンル:小説・文学

[2007/08/02 16:45] ハワード・パイル | トラックバック(0) | コメント(0) | @
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