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金の足のベルタ ―「年とったばあやのお話かご」より

年とったばあやのお話かご (ファージョン作品集 1)年とったばあやのお話かご (ファージョン作品集 1)
(1970/07/20)
エリナー・ファージョン

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「金の足のベルタ」は、エリナー・ファージョンの「年とったばあやのお話かご」の中の一編なのですが、子どもの頃 私が読んだのは 石井桃子訳の岩波書店版ではなく、阿部知二訳の講談社版でした。

原題を直訳すると「年とった乳母の靴下かご」となるところを、それではよくわからないだろうということで、訳者の阿部知二は 本書の中の一編のタイトルをとって「金の足のベルタ」としたそうです。(講談社版のあとがきより)

残念ながら、Amazonには講談社版の書誌データがありません。


もしもタイトルが「年とったうばのくつしたかご」だったなら、子どもの私が手に取ることはなかったでしょう。

岩波の「年とったばあやのお話かご」、これは 今の私の感覚だと素敵なタイトルだと思いますが、子どもの私だったらと思うとやはり 読む気になったかどうかは疑問です。

「金の足のベルタ」というキラキラした、不思議なタイトル(ベルタはたぶん女の子の名前だろうけど、なんで金の足?)に惹かれて図書室の本棚から引っ張り出してみれば、表紙は綺麗な金髪の少女がドレスの裾をつまんで駆けている、淡い色合いの これまたキラキラした絵で。 

一目惚れして何度も借りて読んだはずが、おとなになって思い出そうとしても 内容をさっぱり覚えていないのが不思議でした。

それでいて「金の足のベルタ」というタイトルと表紙の絵のことは覚えているのです。


どんなお話だったのか気になって探していたところ、去年、昔読んだのと同じ講談社版の「金の足のベルタ」をネット古書店で発見して購入。

三十数年ぶりに手に取った懐かしい本は、意外にも記憶にあるものより大きくてずっしりしていました。

この本こんなに大きかったっけ?!

子どもの頃読んだ本をおとなになってから見ると、記憶より小さく感じることはままありますが、逆は初めてです。


さて、内容は、四人の子どもたちの世話をしている乳母が、子どもたちが眠る前に 靴下の穴をかがりながらお話をするという、枠物語の体裁です。

お話は一晩にひとつ。靴下の穴をかがり終えるまでです。

乳母は手に取った靴下の穴を見て、その穴の大きさに見合った長さのお話をしてくれます。

子どもたちは長いお話が聞きたいばっかりに、時にはわざと靴下の穴を大きくすることも。


「年とったうば」「金の足のベルタ」「青いはすの花」「いばりやの王女」「人間て そんなにばかなのかしら」「イラザーデひめのベール」「ラップ人のリップ」「やねの木」「あのあなは かがれないよ」「中国のおひめさま」「金のわし」「ふたりのにいさん」「海の赤んぼう」


「年とったうば」はプロローグのようなもので、乳母がしてくれたお話は あとの十二話。


いったいどのくらい生きているのか誰も知らないという乳母は、まず 四人の子どもたちのおかあさんやおばあさんの乳母でもあったそうです。

そればかりか、グリム兄弟やインドの王子やスペインの王女、中国やペルシアの姫やスイスの女の子、イタリアの男の子にギリシアの女の子、ペルーの王さまにエジプトのスフィンクス、果てはネプチューンの乳母までしたことがあるらしいのです。


「金の足のベルタ」は、ドイツのライン河畔のお城に生まれたお姫さまのお話。

生まれたときの名付け式の贈りものに、ローレライからは右足を金に、ルンペルスチルツキン(ルンペルシュティルツヘン)からは左足の靴下にいつも穴が開くという魔法をかけられたベルタは、そんな足ではお嫁に行けないと心配した両親と乳母によって いつも長い靴下を履かされていました。

そればかりか、何度靴下を替えても 履くとすぐにかかとに大きな穴が開くものですから、それを隠すためにいつもブーツを履いていなくてはなりません。


「靴下にいつも穴が開いてる」って、なんだか地味な嫌がらせみたいな呪いで、いばら姫の百年の眠りみたいにドラマチックなものと比べると妙に所帯じみて聞こえるのですが、乳母が「小さなことだからといって、ゆだんはなりません」と言ったとおり、靴下の穴がきっかけでたいへんなことになっていきます。


ところが、不運だと思っていたことが幸運へと転じ、ローレライの贈りものの正体がわかった時の爽快感は格別。


「金の足のベルタ!ほら、金の足のベルタがいくよ!」


…こんな素敵なお話を、なぜ私は覚えていなかったのか?

もしかすると、不幸な境遇の娘が 王子さまや王さまに見初められてお妃になるというような典型的なシンデレラストーリーを期待していたので、実際の展開とのギャップについていけなかったとか?

お妃になるよりこっちのほうが断然楽しそうなのになぁ。

子どもの頃の自分のセンスが解りません。


「青いはすの花」は、癇癪持ちのインドの王子が魔法使いに命じて 自分の心臓を青いはすの花の中に隠してしまうお話。

池の真ん中に咲く青いはすの花と、それを守る白い象。

癇癪ではなく、初めて 悲しみのために涙を流した日、王子の癇癪は池の底に沈みました。


「イラザーデひめのベール」は、あまりにも美しすぎるため、世界の平和のために顔をベールで覆わなくてはならなくなったペルシアのお姫さまのお話。

なにしろ、イラザーデ姫を見た者は 正気でいられなくなり、姫の目が誰かを見ただけで その者に嫉妬し、切り殺してしまうほどなのです。

トロイのヘレンよりも美しいというイラザーデ姫は、今も世界のどこかで生きているに違いないと乳母は言います。


「うつくしいものは、けっしてほろびないのだから」


どのお話も、ちょっとした教訓を織り交ぜつつ、世界各地を舞台にした 民話のようなものあり、ファンタジーあり、かと思えば少女の初恋物語ありの、不思議でわくわくする物語集です。


講談社版の奥付を見ると、発行は昭和44年6月25日。

45年も前の本なのに、函も経年のわりに傷みが少なく、帯まで残っていてびっくりでした。


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[2014/07/08 17:46] エリナー・ファージョン | トラックバック(0) | コメント(0) | @
M・R・ジェイムズ怪談全集1
M・R・ジェイムズ怪談全集〈1〉 (創元推理文庫)M・R・ジェイムズ怪談全集〈1〉 (創元推理文庫)
(2001/10)
M・R・ ジェイムズ

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恥ずかしながら最近まで知らなかったが、M.R.ジェイムズは、ミステリのコナン・ドイルと並び称されるほどの、イギリス怪奇小説における巨匠だそうだ。

コナン・ドイルは中学生の頃むさぼるように読んだが、M.R.ジェイムズと聞いてもさっぱり覚えがない。

外国の怪奇小説というジャンルは、ミステリほどメジャーにはならなかったんだなーと思う。

2001年に創元推理文庫から出た この全集も、残念ながら今や絶版。

古本を探すしかない。

この第1巻には、「好古家の怪談集」「続・好古家の怪談集」から15編が収められている。

古文書学者、聖書学者であり、博物館長やケンブリッジ大学の副総長を務めたという作者が、趣味で筆を執り、クリスマスに友人や学生たちに読み聞かせたものだという。

職業柄か、登場人物もまた研究者だったり図書館員だったり、発端となる小道具が古書だったり古い銅版画だったり、はたまた遺跡で見付けた笛だったりする。

もちろんそうでないものもあるが。



サン・ベルトランの聖堂を見学に来たケンブリッジ大学の学者・デニスタウンは、堂主から 思いがけない安値で 値打ちものの「貼雑帳(はりまぜちょう)=スクラップブック」を譲り受けた。

それを売った途端に、それまでおどおどと何かに怯えるようにしていた堂主は生き返ったようになり、堂主の娘は デニスタウンの帰り際に銀の十字架と鎖を渡す。

「あなたにつけてもらいたい」と。

夜中に、ホテルの部屋でデニスタウンが「貼雑帳」を見ていると… 
                    「アルベリックの貼雑帳」




孤児となった少年スティーヴン・エリオットは、年上の従兄アブニー氏に引き取られることとなった。

そこですぐに家政婦のバンチ夫人と仲良くなったスティーヴンは、この屋敷で過去に二人の子どもが行方不明になったことを聞く。

いずれも身寄りのない外国人の子どもで、アブニー氏が引き取ったが、しばらくするとどこかへ行ってしまったのだと。 

その夜、スティーブンは奇妙な夢を見た。      「消えた心臓」




大学美術館の収集委員・ウィリアムズは、懇意にしている古物商が薦めてきた古い銅版画を買い入れる。

アマチュアの作品らしいそれは、ごくありふれた荘園邸の全景で、とても価格に見合うものとは思えなかった。

送り返してしまおうと思ったウィリアムズだったが、それを眺めていた友人の一言から異常に気付く。   「銅版画」




マシュー・フェル卿の証言により、一人の女が魔女として処刑された。

それから数週間後、窓から大きな秦皮(とねりこ)の樹が見える部屋で、卿は不審な死を遂げる。

その四十年後、掘り返された件の魔女の墓はもぬけの殻だった。
                           「秦皮の樹」




ほかに「十三号室」「マグナス伯爵」「笛吹かば現れん」「トマス僧院長の宝」「学校綺譚」「薔薇園」「聖典注解書」「人を呪わば」「バーチェスター聖堂の大助祭席」「マーチンの墓」「ハンフリーズ氏とその遺産」を収録。



…うーん。面白くないわけではないけど、日本ではマイナーなのも解る気がする。

「アルべリックの貼雑帳」や「バーチェスター聖堂の大助祭席」などは、日本人には理解し難いのではないかと思う。(もしかしたら私だけかもしれないが)

恐怖の正体、というか 大本が何なのか、非常に解りづらい。

いや、わかるといえばわかるのだけど、キリスト教や聖書に縁がない私には ピンとこない。

訳がまた格調高い名訳で、本文中で「古風な書体」と描写される文章などは 訳も文語調だったりする。

それについていくのに精一杯で、怖がるヒマがない というか、どこで怖がればいいのかわからない。


一方、「消えた心臓」や「銅版画」、「秦皮の樹」、「人を呪わば」などは分かり易かった。

「銅版画」の 見る度に変わる絵は、現代のホラーでも写真やフィルムに形を変えて繰り返し使われるモチーフだ。

思い出したのは、子どもの頃に読んだ漫画。

写真の中の少年の背後に見えている手が 日を追うごとにどんどん少年の肩に近づいてくる。

肩に手がかかったらどうなるのか。

怖い。何しろ写真の中で起きていることで、少年は逃げようがないのだ。

「銅版画」では、何かがこちらに近づいてくるわけではないが、絵の中で一つの事件が起きる。


「人を呪わば」は、錬金術師から逆恨みされ 呪いをかけられた学者・エドワード・ダニングの、日本で言うなら呪詛返しの顛末を描いたもの。

身辺では怪異が頻発し、精神的に追い詰められていたダニングが、やっと難を逃れたというのに、自分を殺そうとした男を気にして 警告のために電報を打つというのが、ものすごく人間らしくてほっとした。



「紳士と奇人の国イギリスでうまれた近代怪談の神髄!」と帯のアオリにあるように、英国紳士が語る古き良き時代の怪異譚。


イギリスの古い邸宅の 暖炉のある居間で、クリスマスの夜に これらの話を聞くことができた人々は 幸運だなぁと思う。

それを前提に書かれた物語なのだ。

聞き手は「もしかしたら先生の知り合いの実話?!」と思ったかもしれない。

何しろ自分たちの身近にある古書・古物に 思いがけない暗闇が…という話だ。

ゾクゾクしないはずがない。



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[2012/12/01 23:18] M.R.ジェイムズ | トラックバック(0) | コメント(6) | @
さかなはおよぐ
さかなはおよぐ (1983年)



amazonのデータには、「ぬたはら のぶあき(著)」となっていますが、奴田原睦明さんは訳者です。

正しくは ヒルミー・トウニイ/絵 ハサン・アブダッラー/文 ぬたはら のぶあき/訳



昭和57年11月に すばる書房から刊行された、パレスチナの絵本です。

この絵本が出た時点で、作者の二人はレバノンで行方不明になっています。



本文は15ページで、巻末に7ページを割いて 評論家・村田栄一、本書の訳者でありアラブ文学者・奴田原睦明 両氏の対談が掲載されています。



ある日、先生に 魚を描くように言われたバーシム少年は、水がいっぱい入った水槽と、その底には水草と小石と砂を描き、その真ん中に魚を描きました。


その絵を見た先生は、水槽なんかなくていい、魚だけを描くようにと言います。


次にバーシムが描いたのは、空を泳ぐ魚でした。


その魚を、家の屋根を越えて、山の彼方までも飛び立たせてやろうとしました。


ところが、また先生に 泳いだり飛んだりしていない魚を描くように言われたバーシムは、今度は死んだ魚を描くのでした。


「およぎも、うごきもしない さかななんて いきている さかなじゃ ないもの」



そんなバーシムに、先生はクラスメイトの絵を指さして言います。


「ファードの かいた さかなを みてごらん!

およいでも とんでもいないけど、しんでやしないだろう?」






「パレスチナの絵本」「作者はレバノンで行方不明に」などと聞けば、予備知識のある大人は、自然にパレスチナ紛争とこの絵本を重ねて読んでしまいますし、実際作者はそういう意図で描いたのだと思いますが、白紙の状態でこの絵本に出会う子どもは、いったい何を思うのでしょうか?


対談の中で村田氏は「そういう大人と子供の二つの出会い方の違いというのは、そんなに矛盾しないと思う」と言っています。


どちらにしても「生の真実」に深く関わると。



「泳いでも飛んでもいないけど、死んでやしない」


妙に頭の隅に引っかかる言葉です。


「死んでない」けど、それは果たして「生きている」と言えるのか?



ファードの絵を見ても納得せず、「ほんとうの さかななら いきているか しんでいるか どっちかだ」と言うバーシムの言葉を、先生はしばらくのあいだ考えます。




…ところで、本書の内容からは逸れますが、いつどこで聞いたのだったか思い出せないけど、ずっと心に残っているエピソードをひとつ。


ある幼稚園で、お絵描きの時間に 青い太陽を描いた子がいました。


それを見た先生が、「あら、○○ちゃん、太陽は赤か黄色でしょ?」と言ったそうです。


その後、その子がどう答えたのか、絵は描き直したのか、それともそのままだったのかは知りません。


夕日は赤いけど、真昼の太陽は、私には赤にも黄色にも見えませんが…


というか、多少雲でもかかっていない限り直視できないので、何色かわからず空の色と区別がつかなかったとか、あるいは何らかの理由で太陽が青く見えた時があったとか。


その子なりの理由があったはずです。


長くなりましたが、何が言いたかったのかというと、要は子どもの絵に干からびた固定観念を押し付けるなと。



さて、本書の先生は、考えた末 バーシムに何と言うでしょうか?


さかなはおよぐ




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[2012/07/17 16:31] ハサン・アブダッラー | トラックバック(0) | コメント(0) | @
「黒ネコジェニーのおはなし」2と3が出ました!
ジェニーのぼうけん (世界傑作童話シリーズ)ジェニーのぼうけん (世界傑作童話シリーズ)
(2012/01/18)
アベリル・エスター

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ジェニーときょうだい (世界傑作童話シリーズ)ジェニーときょうだい (世界傑作童話シリーズ)
(2012/02/15)
エスター・アベリル

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「2 ジェニーのぼうけん」と「3 ジェニーときょうだい」が、知らないうちに出てました。


1の記事はこちらから→「黒ネコジェニーのおはなし1 ジェニーとキャットクラブ」


旧版は2巻だったのに新装版は全3巻。

どんな内容になるかと楽しみにしていましたが…

「2 ジェニーのぼうけん」には、旧版の2に収録されていた「ジェニーがマフラーをぬすまれたはなし」のほか、未邦訳だった「ジェニーが月夜にぼうけんするはなし」を収録。

「3 ジェニーときょうだい」には、これまた旧版の2に収録されていた2編「ジェニーにきょうだいができるはなし」「ジェニーのきょうだいがキャットクラブにはいるはなし」を収録。


ちなみに「1 ジェニーとキャットクラブ」の内容は旧版の1と同じ。


旧版を2冊とも持っているので、未読の1編のために新たに1冊買うかどうかは悩ましいところです。


ジェニーときょうだいのエピソードは、うちの娘が小さかった頃、読み聞かせて 好評だったお話でした。

ジェニーの家に、チェッカーズとエドワードという二匹の猫が引き取られます。

そのことを喜んだジェニーですが、キャプテン・ティンカーのひざに座っている二匹を見て やきもちをやいたり、なだめようとしたキャプテンの手をひっかいてしまったり。

でも、後でそんな自分を反省して 初めてできたきょうだいと仲良くしようと努めます。


ジェニーがきょうだいに キャット・クラブについて説明する台詞「あたしたちのモットーは、誠実、献身、正直、会費よ。」に 思わず吹き出してしまったり、きょうだいに対する親愛や嫉妬に共感したり、読み聞かせるほうも楽しいお話でした。


可愛くてセンスの良い挿絵に むしろ大人が夢中になりそうです。


↓こちらは旧版の2巻。
黒ネコジェニーのおはなし〈2〉 (世界傑作童話シリーズ)



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[2012/02/29 17:28] エスター・アベリル | トラックバック(0) | コメント(2) | @
帰ってきた星の王子さま
帰ってきた星の王子さま帰ってきた星の王子さま
(2005/02)
ジャン=ピエール ダヴィッド

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そのとき、子どもが、あなたがたのそばにきて、笑って、金色の髪をしていて、なにをきいても、だまりこくっているようでしたら、あなたがたは、ああ、この人だな、と、たしかにお察しがつくでしょう。

そうしたら、どうぞ、こんなかなしみにしずんでいるぼくをなぐさめてください。

王子さまがもどってきた、と、一刻も早く手紙をかいてください……
   (岩波書店刊 内藤濯 訳 「星の王子さま」)



サン・テグジュペリがこう記してから半世紀、この呼びかけに応えた人は誰もいませんでした。

「星の王子さまの続き?とんでもない!そんなもの、だれに書けるものか。」

と、訳者あとがきにもある通り、もとの作品があまりに有名すぎて、万一試みたとしても たちまち非難の嵐にさらされそうな そんな大博打、うてるわけがありません。

ところが、1997年になって、とうとう カナダに現れたのです。

「サン・テグジュペリが生きていたら、喜んで握手しにきてくれるような作品を」

そう願いながら書いたという作者ジャン・ピエール・ダヴィッドの、これはサン・テグジュペリへの熱烈なラブレターです。


「サン・テグジュペリさま

今日、こんなお手紙をさしあげるのは、とてもおかしな出来事にあったからです。」



…という書き出しで始まるこの作品の主人公が王子さまに出会うのは、サハラ砂漠ではなく 大洋に浮かぶ小さな無人島。

ミャンマーのチャウピューを目指しての船旅の途中、嵐に遭って船の甲板から投げ出され、ひとりで漂流しているうちに辿り着いたのでした。



作者がこの作品を書くにあたって心掛けたことは、次の三つだそうです。

1.王子さまの人物像を変えないこと。

2.王子さまが、地球にたどりつくまえに、いくつもの星を旅してくるという構想を変えないこと。

3.もとの作品とおなじくらいの長さの作品にすること。



とある事情から、ヒツジの入った箱を抱えて 流れ星にとびのり、再び旅に出ることになった王子さま。

星をめぐり、さまざまな人に出会いながら、最後に 昔出会ったキツネの言葉を思い出し、地球を目指します。

エコロジスト(環境学者)、宣伝マン、統計学者、狂信的な愛国者など、王子さまが出会う人々は前回とは様変わりしているものの、やはり この星の多くの大人たちの姿にほかなりません。


ひとつ「あれっ?」と思ったのは、地球に降り立った王子さまの話を聞いた人々が、「バラの花は、なんの象徴ですか?」「トラはなんの意味でしょう?」「ヒツジはつまり、神の子羊ですか?」
などと口々に質問するところ。

いくら王子さまが「バラはただの植物、トラもヒツジもただの動物です」と繰り返したところで、誰も耳を貸さないのです。

王子さまの話には何らかの寓意が隠されているはず と思い込み、それを解明しようと躍起になっている この人々も、ある種の人々を諷刺したものなのか、それとも批評家への牽制か。


本国カナダではたいへん好意的に受けとめられたという本書、「続編」ではなく、サン・テグジュペリへのラブレターだと思って読めば、とりたてて貶すところのない良い作品だと思います。

なのに、何か物足りなさを感じるのは、王子さまが旅に出ることになったそもそもの原因を取り除く手立てが、結局見つからなかったということと、この先バオバブの木をどうするのかが示されていなかったことが原因と思われます。

バラの花が無事だといいのですが。



ヘレン・スマイス描くところの品の良い挿絵は日本語版だけのオリジナルだそうで、物語のイメージによく合っていて素敵です。



…ところで、私は この本の旧版を古本で入手したのですが、奥付ページの裏の イラストの下に 日付と名前の入ったメッセージが。

どうやら1998年のクリスマスプレゼントだったらしいのですが。

そしてどうみても彼から彼女へのプレゼントなのですが。

この本が古本屋にあったということは、二人は別れたってこと?

この本を開く度に、他人様の人生の一コマを盗み見したようで、フクザツな気持ちになります。



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[2011/11/17 17:19] ジャン・ピエール・ダヴィッド | トラックバック(0) | コメント(2) | @
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