わが手に拳銃を
わが手に拳銃をわが手に拳銃を
(1992/03/25)
高村 薫

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「ハードボイルド」とは、文芸用語としては、反道徳的・暴力的な内容を、批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する手法・文体(Wikipediaより)のことらしい。

この、ハードボイルド小説というのが、どうも苦手だ…


昔、フィリップ・マーロウのかの有名な台詞が、一体どんな状況で使われたのかと興味を惹かれ、レイモンド・チャンドラーの「プレイバック」を読んだ。
その後も何冊かチャンドラーの小説を読んだが、どれもピンとこなかった。


北方謙三の「ブラディ・ドール」シリーズ。これも10冊全部読んだが…
なんで途中でやめなかったのか自分でもよくわからない(笑)
角川文庫のこのシリーズは装丁がカッコよかったから、見かける度についフラフラと手が伸びてしまったとか…
そんな理由だと思う。たぶん。


ほかにもいろいろあったが割愛。
自分には合わないと思っていても、魅力的な書評を読むと、懲りずにまた手を伸ばしてしまう。


中には、藤原伊織の「テロリストのパラソル」のように面白いと思うものもあったが、たいていは「男性用のハーレクイン・ロマンス」(by斎藤美奈子)という揶揄はドンピシャな表現だと、そっちのほうに感心してしまった。



前置きが長くなったが、村薫である。
彼女をハードボイルド作家とは呼ばないのかもしれないが、あの硬質な文体こそハードボイルドだと思う。
あまりにガチガチなので、揶揄する隙もない。


初めて読んだのは「照柿」で、どうにも読みにくい小説だなぁと思った。
難解なわけではないのに、なぜか「読みにくい」と感じる。

懲りずに次に手に取ったのが「神の火」
やっぱり読みにくい…


内容よりも「読みにくい」という印象だけが強く残って、その後何年も遠ざかっていた作家だった。
それをまた読む気になったのは、知人の一人が「わが手に拳銃を」が好きで、何度も読み返していると聞いたから。
本の好みが合いそうな彼女が「月に一度は再読する」と聞けば、やっぱり読んでみたくなる。


1992年の作品だから、とっくに文庫落ちしてるはず…と思って探したが、これが見当たらない。
なんでも、文庫化にあたり大幅な改作を行ったとかで、「李歐」のタイトルで出た文庫版は もはや原型を留めていないという。


「李歐」も読んでいる彼女が、敢えて「わが手に拳銃を」が好き!と言うのだから、そっちを買ってみた。



1961年、大阪の町工場を一発の銃声が貫いた。
当時7歳だった一彰を庇った母は銃弾に倒れ、帰らぬ人となる。

母の死後、父と共に大阪を離れた一彰だったが、大学入学と同時にひとり大阪に戻り、クラブでボーイのアルバイトをしながら、母を撃った男を捜すのだった。

その男、趙文礼が北新地のクラブに現われた夜、趙に中国語の電話がかかり、直後に銃声が轟いた。
趙を撃った男の名は、リ・オウ。美貌の殺し屋。


リ・オウと関わったことにより、一彰は自ら裏社会の深みへと足を踏み入れていく…





私がトシをとったからか、作者の若い頃の作品だからか、「読みにくい」とは感じなかった。
拳銃の構造や部品の名前など全く知らないというのに、読んでいるうちに、深夜の町工場で拳銃のオーバーホールをする男の姿がリアルに想像できてしまう。
拳銃に関しては、これでもかというほど緻密な描写が続く。


正直、中国や台湾のシンジケートだのCIAだの、スパイが暗躍する国家レベルの駆け引きともなると、何がどうなっているのかわけが解らない。
それでも一気に読んだのは、リ・オウの魅力に尽きる。


ダンス(おそらく中国の民族舞踊)が上手で、英語も日本語も中国語も自在に操り、頭が良くて大胆不敵。
非情な殺し屋かと思えば、驚くほど義理堅い一面もあり、子どものような愛嬌もある。


リ・オウが見せる一彰への執着は、「借りがある」という事実を差し引いても度を越している。
一彰もまた、何の義理もないリ・オウを命がけで庇ったのは、彼の中に惹かれてやまない何かを見たからだろうけれど。



「警察へ自首して、救われるのは誰だ?
刑務所に入って救われるのは、あんたの魂か。社会規範か。法律か。
俺はそういうことは分からないが、少なくとも、この国も社会も、人ひとり裁くほど偉くはないぞ」




こういうことをさらっと言ってしまうリ・オウは、一体どれだけの修羅場を潜ってきたんだか…



この本を読んでいるうちに、私がなぜハードボイルド小説が苦手なのかわかった気がした。
情緒表現を抑えているだけに、登場人物の心境が理解し難いのだ。

「なんでそんなことするの?!」と疑問に思いつつ読むので、イマイチのめり込めない。
例えば、この本で言うと、母を殺した凶器である拳銃に、一彰がなぜそこまで魅かれるのかが解らない。
一彰の場合は撃つほうではなく、機械としての拳銃の構造や外見に魅かれたのではあるが。
守山に譲られた工場で、暴力団から依頼を受けて拳銃のメンテナンスを続ける一彰の心境は、理解に苦しむ。


「結局、好きだったのさ。七つのときからな」


たったこれだけの理由だったとは。
幼い男の子が、車や電車やロボットに夢中になるのと変わらない。
というか、その子どもが そのまま大人になったのか。


実際そんなものかもね~、私が女だから理解できないだけで…と思ったが、作者も女性である(笑)
どうしてこんな小説が書けるんだろう?



哀愁漂うプロローグから想像したものとは真逆の、実に爽快な結末に驚いた。
こうくるか~!!!という感じ。


舞台が大阪ということもあって、馴染みのある場所が次々に出てくるのも面白い。

曽根崎警察署の地下入口って…
昔よく梅田に遊びに行ってた頃、待ち合わせ場所の定番だった。
蛸足のように四方八方に通路が伸びた梅田地下街。方向音痴の私でも迷わず辿り着ける、数少ない目印だった(笑)
あそこでドンパチとはね~


「李歐」を読んでから、もう一度読み返してみようと思う。


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[2010/03/09 15:43] 高村薫 | トラックバック(0) | コメント(5) | @
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