豊田徹也「アンダーカレント」
アンダーカレント  アフタヌーンKCDXアンダーカレント アフタヌーンKCDX
(2005/11/22)
豊田 徹也

商品詳細を見る


「映画一本よりなお深い、至福の漫画体験を約束します。」


…という、自信満々の帯の惹句にまんまと乗せられて購入したのが、今から四年前。

最近ふと思い出して、無性に読み返したくなったので、引っぱり出してきた。


undercurrent : ①下層の水流、底流 ②(表面の思想や感情と矛盾する)暗流



夫が失踪し、その原因に心当たりもなく、途方に暮れる銭湯の女主人 関口かなえ (推定30歳)
銭湯組合の紹介で、かなえの経営する「月乃湯」に手伝いに入った寡黙なボイラー技師 堀 隆之 (推定35歳)


ふたりを中心に、一見淡々と流れていくように見える人々の日常。

かなえの夫 悟の行方と失踪の原因を探ることがストーリーの軸かと、最初は思った。


「何がいちばん つらいかっていうとね……
あたしは彼のこと 実はなんにも
わかってなかったのかもしれない
そう思うのが いちばん つらいんだ」



その かなえの思いに追い討ちをかけるかのように、探偵は言う。


「お話聞いてて 思ったんだけど
なんかこう 見えてこないんですよ
あなたのご主人 悟さんのパーソナリティみたいなものがさ

人当たりがいい
面倒見がいい
責任感がある

そんなのは その人がその人たりえてるモノとは
なんの関係も ないんですよ」



かなえの大学時代の友人のツテで、経費のみで調査を引き受けてくれた、この「山崎」という探偵は、ヨレッとした見た目に反して言うことは的を射ているし、仕事も出来る。
おまけに、なかなか粋な心遣いを見せてくれたりもする。



地元では有名な変わり者の老人、正体不明で胡散臭いことこの上ないが、どこか憎めない「サブ爺」 は、度々かなえを怒らせては出入り禁止を申し渡される。が、一向に懲りない。
ただのお笑い担当かと思えば、ラスト近くで思わぬ炯眼を発揮する。



ほんとうに、映画のような印象の漫画だった。
コマ割りの仕方がそう思わせるのか、私は漫画の描き方など知らないのでなんとも言えないが、コマを目で追っていくうちに映像を観ているような気分になる。


特に秀逸だと思ったのが、池の水面に見入り、そのまま吸い込まれてしまいそうな かなえの意識をこちら側に引き戻すべく 投じられた石。
波紋が水面にうつる影を乱し、かなえはやっと顔を上げてこちらを見る。

台詞がひとつも入らない、この一連のコマの流れが とても好き。



何かを暗示するように、度々印象的に描かれる水面。
かなえがよく見る夢。


それらの答えは、ある事件をきっかけに明らかになる。
忘れたわけではなく、心の深遠に沈んだままだったモノが浮かび上がり、かなえの意識を侵食してゆく。

夫の失踪より、ハッキリ言って こちらのほうが余程重い。


タイトル通り、かなえ、堀、悟、三者三様の心の底流(アンダーカレント)が交錯して織り成す物語。



「私は 自分の本当の姿だって よくわからないもの」



とは かなえの言葉だけど、人は誰しもそうではないのか。
わかってるつもりでいるのは表層だけで、きっと彼らと同じようにアンダーカレントを抱えてる。



静かな静かな、それでいて 胸の底からじわじわと希望が湧いてくるような、不思議な余韻のラストが心地良い。



絵柄は、人によって好き嫌いがあると思うが、描き込み過ぎず、丁寧に描かれた絵だと思う。
最初のほうの かなえが男か女かわからないとか、赤ちゃんの顔が赤ちゃんらしくないとかを差し引いても、ストーリーと構成でお釣りがくる。


何から何まで地味なのに、忘れられない秀作。


ブログランキングに参加しています。お気に召しましたらぽちっとお願いいたします。
くつろぐブログランキング参加中。お気に召しましたらぽちっとお願いいたします。
にほんブログ村ランキング参加中。お気に召しましたらぽちっとお願いいたします。
スポンサーサイト

テーマ:漫画の感想 - ジャンル:本・雑誌

[2010/05/28 16:31] 豊田徹也 | トラックバック(0) | コメント(0) | @
| ホーム |

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

お世話になってます

【ほんぶろ】~本ブログのリンク集

RSSフィード

BlogPeople

フリーエリア

楽天市場のおすすめ商品

フリーエリア

おすすめお小遣いサイト


おすすめアンケートサイト

メールで送られてくるアンケートに答えてポイントGET! 貯まったポイントは換金できます。 マクロミルは事前アンケートがたくさん届くので、1~2ヶ月で500円貯まりました。

マクロミルへ登録

アフィリエイト

PageRanker