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マツの木の王子
マツの木の王子マツの木の王子
(1999/12)
キャロル=ジェイムズ

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この本も、「ムッドレのくびかざり」「ひかりの国のタッシンダ」と同様、フェリシモの企画により復刊しました。
「子どもの頃に読んだあの本をもう一度読みたい!でもタイトルが思い出せない!」という依頼に応えて本を探すという「本の探偵」赤木かん子さんが、二番目に多く訊かれた本だそうです。
初版は1967年。1999年に復刊するまでは幻の名作でした。

以下、ネタバレしてますのでご注意を。


むかし、遠い遠い国の高い山の谷あいに、マツの木の王国がありました。
自分たちをいちばん高貴な木だと自惚れるマツの木たちは、マツの林の中にたった一本芽吹いたシラカバが目障りでなりません。
事あるごとにシラカバの少女を苛めます。
けれど、マツの木の王子だけは、シラカバの少女が好きでした。


「なぜ、みんなは、あんなにかわいくてやさしい小さな木に、ひどいことをいうのだろう?」


シラカバの少女がきこりに伐り倒された時、マツの木の王子もまた、あまりのショックにばったりと倒れてしまいます。
けれど、ふたりは死んでしまったわけではなく、ここからがふたりの長い長い旅の始まりでした。


きこりによって材木屋に売られたものの、若すぎるせいでなかなか買い手がつかないマツの王子とシラカバの少女は、年よりのカシの木の話から、自分たちは たきぎかマッチ棒か紙にされてしまうかもしれないと思い、悲しくなります。


そんなふたりに、年とったリンゴの木がかけた言葉がとても素敵。


「気にしなくてもいいよ、おまえさんたち。
わたしは、たきぎように売られるかもしれないけれど、ちっとも気にしてはいない。
わたしがもえるときは、とてもあまい、いいにおいがするから、わたしは、みんなをしあわせにできるもの。」




けれど、幸いにも、ふたりを買ったのは優しい木彫り職人のおじいさんでした。
おじいさんの手によって、マツの王子は黒い馬に、シラカバの少女は銀色の鹿に生まれ変わったのです。


長い長い間、マツの王子とシラカバの少女は、ほかの木彫りの動物たちと共に、それはそれは幸せに暮らしました。

病気に罹ったおじいさんを助けるために、ふたりが自ら売られることを決意するまで、それは続きました。


ふたりを買ったのは旅のサーカス団で、メリーゴーランドの動物になったふたりは、今度はいろんな町をめぐり、たくさんの子どもたちを楽しませます。



赤木かん子さんは、この物語を「気高いラブロマンス」だと書いていらっしゃいました。
愛するひとと共に生きられる幸せを、マツの王子とシラカバの少女は体現していて、ちょっと物悲しいようなラストも、よくよく考えれば紛れもないハッピーエンドです。


でも、どうも私は感動するポイントがズレているらしく…。
メインであるラブロマンスよりも、たきぎとして売られたリンゴの木の言葉や、がらくた置き場に打ち捨てられた黒い馬と銀色の鹿を探しにきた子どもたちの言葉に、思わずうるっときました(笑)



「とうとう、きみたちを見つけたよ。とてもあいたかったよ。」

「あなたたち、ふたりでいっしょにいられなかったから、かなしかったのね。
それで、ぐあいがわるくなってしまったのね。」

「あなたたちを、わたしたちのあそび場につれていってあげましょう。
そうすれば、いつまでもいっしょにいられるわ。」




なんて優しい子どもたち!
そう、メリーゴーランドでは、ふたりは常に真ん中の柱を挟んだ反対側にいて、お互いの姿を見ることすら叶わなかったのです。


子どもたちと庭師のおじさんしか入れない美しい庭の、いちばん美しい一角に、ふたりは並んで置かれたのでした。



長い長い時が過ぎた ある秋の終わり、青いけむりとなったマツの王子とシラカバが、故郷のマツ林へと還っていくラストがとても美しい。



猪熊葉子さんの訳が素敵です。
マツの王子とシラカバの少女の言葉遣いは品があって美しく、子どもたちは可愛くて礼儀正しいのです。

そして、この静かな静かなラストシーンが、何より美しいと思います。


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テーマ:児童書 - ジャンル:本・雑誌

[2009/10/30 16:25] キャロル・ジェイムズ | トラックバック(0) | コメント(10) | @
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