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ゆびぬき小路の秘密
ゆびぬき小路の秘密 (福音館文庫 S 53)ゆびぬき小路の秘密 (福音館文庫 S 53)
(2008/03)
小風 さち

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作者の名前を知らないまま読んでいたら、外国の児童文学の翻訳だと思い込んだかもしれません。
タイムスリップを扱った児童文学の中では、私の知る限りフィリパ・ピアスの「トムは真夜中の庭で」が最高傑作だと思っていますが、この本も期待以上に面白かったです。


時は1960年代のイギリス。
11歳の少年バートラムがサウスウッドの町に引っ越してきたところから、物語は始まります。


散歩の途中で見つけた「ゆびぬき小路」の古着屋で、バートラムがお母さんに買ってもらった濃いグレーのコートには、ひとつだけ違うボタンが付いていました。
いぶし銀のような光沢のそのボタンは、不思議なことに五つ穴で、ボタンを留める糸が一筆書きの星の形に通っているのです。
そのコートは、ゆびぬき小路のいちばん奥で店を営む、頑固で偏屈だけれど腕は確かな仕立屋 ロザムンド・ウェブスターが仕立てたものでした。


不思議なボタンの力で、バートラムは度々 過去のゆびぬき小路に迷い込みます。

以下、ネタバレありですのでご注意を。
全部バラしているわけではありませんが、この本は、前知識なしで読んだほうが断然面白いです。





五つ穴のボタンは五個でひと組。
仕立屋ウェブスターに代々伝わる宝物でした。

そんな大切なものを、ロザムンドはなぜ次々と手放したのか?

バートラムにも、そして読み手にもさっぱり解らなかったその理由を彼女が語った時、言葉のひとつひとつが胸に沁みました。


「仕事というのは、自分にとっていちばん大切なものを使うこと」

「それは、わたしが服を仕立てるときに、わたしが服にこめるもの。
わたしの愛情や、忍耐や、努力のことさ。
仕立てに使うわたしの時間と、仕立屋として生きてきた、すべての時間のことさ」

「大切なものほど、手放さなければならないんだよ」




ところで、バートラムが過去のゆびぬき小路で出会った人の中に、窓ふきを仕事にするエイドリアンという青年がいます。
バートラムの生きる現在では、彼は駅の裏に住みつく年老いた浮浪者。


ロザムンドと同じ、仕立屋の子どもに生まれながら、「自分には不向きだ」と早々に諦めてしまったエイドリアンと、職人気質の仕立屋ロザムンドとは実に対照的です。


ロザムンドだって最初から腕の良い仕立屋だったわけではありません。
むしろ母親に「能なしの頑固者」と言われるほど不器用で、自分でも「仕立屋なんかになりたかない」と言っていました。


「わたしはただ、わたしにとっての幸せが、一枚の布を一着の服に仕立てることだということを、受け入れただけなのです。」


不器用であっても裁縫が嫌いなわけでは決してなく、母親と喧嘩して家を飛び出した後、一人きりで縫い方のおさらいをしていた女の子は、一流の腕を持つ仕立屋になりました。


ロザムンド・ウェブスターの仕立てたコートの着心地を、ある人物が回想するこのくだりが素晴らしい。

「手を通すと流れるように滑って体を包み、ふんわりとゆるいほどに体になじみ、一定の心地よいリズムでなめらかにボタンがとまったものだ。
こう、するっ、するっ、するっと」


まるで自分がその服に袖を通しているような気がして、うっとりします。
きっと、着ているだけで幸せになれる類の服なのでしょう。
こんなコートを一着持てたら…と、思ってしまいました。



対して、

「窓ふきなんて、つまらねえな。ふいてもふいても、窓の外っ側にいるばかりでよ。
どんなに磨いたって、むこうにはいることはできねえんだ」


と言いながら、たいした稼ぎにはならない窓ふきを続けるエイドリアン。


少年と頑固な仕立屋のおばあさんの奇妙な交流が主題のように見えて、その実、作者がいちばん書きたかったのは、ロザムンド・ウェブスターとエイドリアンの生き方の対比ではないかと思います。
最後のほうなど、エイドリアンが主役に見えました。


住んでいた長屋が取り壊されることになり、住む所を失ったのを手始めに、不運が不運を呼び、坂道を転がり落ちていくような有様のエイドリアンを、バートラムの目線で追っていくうち、
止める術がないことがもどかしく、いたたまれない気持ちにさせられます。

取り返しがつかなくなる前に、どうしてもっとまともな仕事を探さなかったのかとか、「自分にも仕立ての腕があれば」と思うのなら、父親が生きているうちにどうしてちゃんと教えてもらわなかったのかとか…。


何もかも失くしたかに見えたエイドリアンのたったひとつの宝物が、あの仕立屋ウェブスターに伝わる五つ穴のボタンだったというのが、なんとも皮肉でした。
ボタンは、父親が遺した最後の布でロザムンドに仕立ててもらった上着に縫い付けられていたのです。




不思議なボタンに仕立屋の手が加わって過去と現在を繋ぐという設定が面白く、読み応えがあります。
現在に帰ってきたバートラムと、全てを聞いた後のロザムンドとの会話がしみじみと味わい深い、良い作品でした。


でも、一度 五星形に縫い付けられた五つのボタンを、もう一度全部揃えた時に何が起こるのか 知りたかったなぁと、ちょっと残念に思います。
もう決して誰にも揃えることはできないから、余計に。


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テーマ:児童書 - ジャンル:本・雑誌

[2009/11/09 16:22] 小風さち | トラックバック(0) | コメント(0) | @
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