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ふたりのひみつ
ふたりのひみつ (1977年) (あかね世界の児童文学)



エリカとインゲは双子の姉妹。

30分早く生まれてきただけなのに、しょっちゅうお姉さん風を吹かせて あれこれ命令するエリカに、インゲは不満を募らせ、時にはそれが爆発してしまいます。


「エリカ、あんたなんか、死んじゃえばいいのに!」


インゲがそう言った数週間後、9歳の誕生日を迎えて間もなく、エリカはほんとうに 急な病で死んでしまうのでした。



…双子って、不思議ですよねぇ。

一卵性双生児は、受精卵が何かの拍子にふたつに分かれなければ、ひとりの人間として生まれてきたはず。

なのに双子で生まれたふたりは、姿かたちは瓜二つでも それぞれ別の人格と魂を持った人間で…


子どもの頃、双子を題材にした漫画や小説を読むたび、ちょっと羨ましく思っていました。

自分と全く同じ顔の子が、いつもすぐそばにいるのってどんな気持ちだろう?とか、
同い年の子がひとつ屋根の下にいるなんて、友だちと一緒に暮らしてるみたいで楽しそうだなぁとか、
たまに相手と入れ替わったりして、家族や友だちをだますのはスリルがあって面白そう、とか。


このお話の語り手はインゲで、双子ならではの悩みや苛立ち、そして喜びが、インゲの眼を通して細やかに語られます。

子どもの目線で見たもの、感じたことをそのまま写し取ったような描写にドキリとしつつ、
そういえば、子どもが面白がる児童書はたくさんあっても、ここまでリアルに子どもの感覚を捉えたものって あんまり無いような…と、ふと思いました。

主人公が、対象としている読者の年齢層と同じ年頃であっても、その思考回路や行動パターンは現実の子どもよりずっと大人びていて、だからこそ子どもは主人公に憧れるし、面白いと思うのかもしれません。
そう思ってみると、等身大の子どもを主人公にしたお話は、そこに余程の冒険やドラマがあって、その過程で主人公が人間的に成長していくものでないと、子どもには受け入れられないのかなぁと思います。


でも、このお話、もしも子どもの頃に読んで その時はなんとも思わなくても、ずっと頭の片隅に引っかかっていて 何年も経って不意に思い出して じわじわくる類のものではないかと。


インゲの心の揺れが非常に繊細に描かれているのはもちろんですが、何がすごいって マグダという女の子。

エリカもインゲも、隣の家に住むひとつ年上のマグダが大好きで、どちらがマグダの「いちばんのなかよし」かということで争ったりするのですが、この本を読んだ子どものほとんどは「なんでこんな嫌なヤツと?!」と腹立たしく思うのではないかと思います。


おとなの私が読むとどうかと言えば、マグダに悪気がないことは解るのですが、子どもだからこその残酷さや狡さがマグダを通してリアルに見えてくるので、いっそ忘れてしまいたいと思っていた子どもの頃の苦い思い出が鮮明に蘇ってきて、いたたまれないというか、なんか複雑な気持ちに…。

…いたよなぁ。マグダみたいな子。


子どもは誰しも、時には(あるいはいつも)「マグダ」だったり、「インゲ」だったり「エリカ」だったりするものですが、残念なことに、自分が「インゲ」だったことは覚えていても「マグダ」だったことは忘れてしまうもの。
なぜって、その時のマグダには悪気がないのと、たとえ後でうしろめたい気持ちになっても 頭の中で屁理屈をこね回して自分のしたことを正当化して自分自身まで騙してしまうので。



きょうだいがいるのって、ほんとうにすてきです。
とくに、チョウチョウをいっしょにながめられる、
小川が流れていくのや、リスがはねまわるのをいっしょにながめられる、
小鳥や草や野の花をいっしょにながめられる、
ふたごのきょうだいがいるのって。
ふたりいっしょだと思えるのって、ほんとうにしあわせでした。



マグダが思いやりのない言葉を残して帰って行った後、インゲは(そして多分エリカも)ようやくそのことを実感したのでした。



訳者あとがきによると、 作者のボーゲルさんにも双子のきょうだいがいたそうです。
その子がその後どうなったのかはどこにも書かれていないらしいのですが、このお話は全くのフィクションではなく、作者の経験が多分に含まれているのではないかと思われます。



エリカが死んだと聞かされた直後は 冷たく思えるほど落ち着いていたインゲが 徐々に混乱をきたしていく様子が淡々と描写され、それが真に迫っているので、作者がかつての自分をなぞって書いたのではないかと思えてなりません。



あなた、だれなの?
わたしはわたしにむかって、きいてみました。
エリカ?それとも、インゲ?
わたしにはこたえられませんでした。
インゲ?それとも、エリカ?
もういちど、きいてみました。
すると、こたえのかわりに、涙があふれ出てきました。




作者自身の手による挿絵も、お話と同じように とても繊細で静謐。

秀作ですが、残念ながら絶版です。

もしも図書館などで見かけることがあれば、ぜひ手に取ってみてください。


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テーマ:児童書 - ジャンル:本・雑誌

[2010/05/20 16:21] イルズ・マーグレット・ボーゲル | トラックバック(0) | コメント(4) | @
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コメント
----
asagiさん、はじめまして^^*

asagiさんの紹介して下さる本、そこへの深い考察、思い・・・とても読み応えがあり、いつも楽しく興味深く拝見させていただいています。
今日は、ドキドキしながら、思い切ってコメントを残させていただくことにしました。

私も本が好きで、本に囲まれていると幸せを感じるのですが、asagiさんのブログを拝見させていただきながら、読んだことのあるもの、ないもの、その両方に、こんな視点があったんだ、こんな世界があったのだと、新たな広がり、深さを示していただけているように感じます。

さっそく手に取りたい本が何冊も・・・。

これからも、楽しみにしています☆
[2010/05/23 20:01] URL | さら #.X2cs9xU [ 編集 ]
--さらさんへ--
はじめまして。
とってもご丁寧なコメントを、どうもありがとうございましたm(__)m
なんだかもう、ドキドキしていただいたのが申し訳なく、土下座したい気持ちに…(^^;

絵本やら漫画やら小説やらとジャンルがバラバラな上、まとまりなく好き勝手に書き散らかした感想でも、ちゃんと読んでいただけて、「この本読みたい!」と思っていただけるなんて、すごく嬉しいです。
ありがとうございます^^

あかちゃんは可愛くて可愛くてたまらないけれど、体力も根気も要求されますね^^
どうぞお身体に気をつけてお過ごしくださいね。
[2010/05/24 17:16] URL | asagi #9kA7E2gM [ 編集 ]
--双子って--
こんばんは。
双子って兄弟姉妹とはやっぱりどこか違う感覚があったりするのかなと思うけど、
こればっかりはわからないものねぇ。

レビューを読んでてなんとなく、萩尾望都の「半神」を思い出した。
双子っていうと「双子のロッテ」とか、子供の時は読んだ気がするんだけど、
さっぱり覚えてないの。
「大泥棒ホッツエンプロッツ」とかね。
たまには懐かしいものも読むべきだわね。

というか、下のハガレンレビューに堪能しました☆
終わっちゃうとはびっくりですが、
ラストまで鼻息荒く(笑)レビューお願いしますね。
[2010/05/25 19:56] URL | さくら #- [ 編集 ]
--さくらさんへ--
さくらさん、こんにちは。

そうそう、「半神」にも似たようなシーンがありましたよね!
「あの時死んだのは私?」と混乱するユージィが、このお話のインゲに重なります。

児童文学で双子ものといったら、やっぱりロッテがいちばん有名なんだと思うけど、読んだことないんですよ~(^^;
ホッツェンプロッツは私も読んだけど、タイトルをしっかり覚えてるわりに、さくらさんと同じく内容はさっぱり(笑)

>ハガレンレビュー

あははは^^
最近、娘の私を見る目が、生温かいです…
コミックスの最新刊を買ってきてもなかなか読み始めない私に、ちょっと前まで「早く読んで私にまわして!」と言ってたのが、最近は「読みたい時にゆっくり読んでいいよ。もう、早く読んでとか先に読ませてとか言わないからね。」と、哀れみに満ちた眼差しで言うのよ~(^^;

きっと最終巻は、いつもにも増して熟成させてからでないと手をつけられないと思うわ(笑)
…というか、レビューなんて書けるんだろうか、私。
[2010/05/26 14:33] URL | asagi #9kA7E2gM [ 編集 ]
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