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星のひとみ
星のひとみ星のひとみ
(1992/11)
ザカリアス トペリウス

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トペリウスの童話としては、「木いちごの王さま」よりこちらの方が日本では有名なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

いろんな出版社から様々な形で出ていますが、アリス館の絵本がいちばん美しいと、私は思います。


クリスマスの前夜、サミ人の夫婦がトナカイのひくそりに乗って雪の山を走っていました。
おかみさんは、胸に小さな子どもを抱いていました。
(※サーミ人。スカンジナビア半島北部に居住する少数民族)


空には北極光(オーロラ)が燃え、星は美しく光り、雪がきらきらと輝く美しい夜でした。
素晴らしい旅になるはずだったのです。そこにオオカミの群れさえ現れなければ。


トナカイが驚いて死に物狂いで駆け始め、そりが激しく揺れたはずみに、おかみさんは子どもを雪の上に落としてしまいます。
オオカミたちは子どものそばにやってきましたが、無邪気な瞳で見返す子どもをびっくりしたように眺め、しばらくするとトナカイの後を追いかけて行ってしまいました。


子どもは、たった一人雪の上に横たわって星を見つめ、星が子どもを見おろしているうちに、星の光が子どもの瞳の中に宿りました。


たまたま通りかかったフィンランド人の農夫に拾われた子どもは、エリーサベートという洗礼名をもらうのですが、星のように輝くその瞳ゆえに、「星のひとみ」と呼ばれるようになります。

フィンランド人の夫婦は、星のひとみを自分たちの三人の息子と同じように、分け隔てなく可愛がって育てました。


ですが、星のひとみに不思議な力があることにおかみさんが気付いてからは、何かが少しずつ狂い始めるのです。


星のひとみは、何でも見通す子どもでした。

旅の男が盗んだ指輪の行方から、おかみさんの考えていることまでも。

最初は気付かないふりをしていたおかみさんも、ある日我慢の限界がやってきて、星のひとみに目隠しをした上、地下のあなぐらに閉じ込めてしまいます。


子どもの頃、初めて読んだときは、ただただ星のひとみが憐れで、可哀想でならなかったのですが、今読み返してみると子どもの頃には気付かなかったことにも気付かされます。

それは、根深い民族差別や偏見であったり、大人の事情であったり。


いったい、心の中のすべてをさらけ出して、かけらも恥じるところのない人間など、いるものでしょうか?


「牧師さんに差し上げるお礼は、この小さいほうの鮭でいいわね。」


そう思ったとしても、それは自分の心の中だけのこと。

人によって程度の差はあれ、おとなであれば小さな打算は日常茶飯事で、そのことで自身を恥じる人などいないでしょう。


星の光を宿した無垢な瞳で、何の悪意もなくそれを人形遊びで再現されたとき、おかみさんは本来なら感じることのない自己嫌悪に陥り、同時に星のひとみが得体の知れない恐ろしいものに見えてきたのです。


今まで星のひとみを可愛がって育ててきた人なだけに、余計にこの養母が憐れに思えました。


目隠しをされ、地下のあなぐらに閉じ込められてさえ、星のひとみにはすべてが見えるのです。
ならば、彼女もまた、酷い目に遭わされている自分自身よりも、養母をかわいそうに思ったかもしれません。


やがて、星のひとみは再び雪の上に横たわります。


星は 子どものひとみの中に かがやき、その心の中を のぞいてみました。

そこには かみさまを あがめる きれいな心の ほかには なんにも ありませんでした。



「もしかしたら、あなたがたの中の誰かが、姿を消した星のひとみかもしれない」と、物語の最後に作者は語ります。


そんな子どもに出会ったら、せめてまっすぐにその瞳を見返すことのできる人間になれたらいいのですけれど。


私が子どもの頃に読んだものは岩波少年文庫版でした。
アリス館の絵本は、訳は同じ万沢まきさんですが、絵本化にあたって原作をわずかに抄訳しているとのことです。


おのちよさんの絵は、ページごとに縁取りのデザインまで変えるという凝りようで、表紙も中身も非常に美しい絵本です。

※現在、上記のAmazonのリンク先にあるのは改訂版で、下の画像とは表紙が全然違います。中身がどうなっているのかは未確認です。(2013年11月1日追記)



アリス館 1992年10月31日発行
Z.トペリウス/作
おのちよ/絵
万沢まき/訳

星のひとみ


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[2007/09/04 10:52] ザカリアス・トペリウス | トラックバック(0) | コメント(0) | @
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