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梓崎優「叫びと祈り」
叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)
(2010/02/24)
梓崎 優

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雑誌記者の斉木が、世界各国で遭遇する事件を描いた連作短編集。



・千年の昔から続く交易路「塩の道」を取材するため、斉木は サハラ砂漠を行くキャラバンに同行する。

少人数のキャラバンの中で起こる不可解な連続殺人。

広大な密室のような砂漠にあって、犯人はキャラバンの中の誰かでしかあり得ない。

動機は何か?

容疑者が数人に限定される状況で、殺人を犯すことのリスクを帳消しにするほどの どんなメリットが? (砂漠を走る船の道)





・一年前、青い屋根の風車に入っていったきり、忽然と消えたサクラの恋人。


その同じ風車で、数百年前、一人の兵士が姿を消したのだという。

イスラム教勢力とキリスト教勢力がスペイン全土で争っていた時代、イスラム兵に追われていた兵士セレッソは風車の中に隠れ、そして消えた。

数日後、セレッソが携えていた密書は味方の軍に渡り、それをきっかけにキリスト教側はイスラム側を次々と撃破していった。


中部スペイン、レエンクエントロの街。

「竜の背」と呼ばれる風車の丘で、土産物屋の主人から兵士セレッソの物語を聞いた 斉木、サクラ、ヨースケの三人はそれぞれにその謎を解こうと 推理を始める。 (白い巨人)





・聖人認定の調査を取材するため、斉木は ロシア正教会の司祭に同行して 南ロシアの女子修道院を訪ねる。

モスクワの修道院宛に、かの女子修道院の院長から「ある修道女の列聖をお願いしたい」という手紙が届いたためである。

修道女の名はリザヴェータ。

彼女が生前に起こしたと伝えられる数々の奇跡もさることながら、その遺体に起きた奇跡ゆえに聖女として崇められてきた。

死後250年を経ても腐敗することなく当時の状態を保っているという、所謂「不朽体」である。



誰よりもリザヴェータを崇敬する修道女スコーニャは、リザヴェータの聖性を疑っているかのような「調査」を快く思っていない。

一方、司祭は「三日間 リザヴェータ様の棺のそばを離れず祈りを捧げたい」と申し出て、院長はそれを承諾する。



翌朝の礼拝の後、祈りの間にこもる司祭と別れた斉木は、ある事に気付き愕然とするのだった。 (凍れるルーシー)






・NGOなどの団体に属さず個人で医療ボランティア活動を続ける英国人医師アシュリー・カーソン。

斉木は彼に同行し、アマゾン奥地の少数民族「デムニ」を訪ねるが、集落では異変が彼らを待ち受けていた。

通訳の青年ダビによると、わずか50人弱の小さな部族で、ほとんどの人が病に冒され その大半が死んでしまったという。

今現在、病に冒されていない(あるいは症状が出ていない)のは、たったの6人。

これまでの経緯を聞き、長老の息子を診察したアシュリーは、エボラ出血熱を疑う。


「街に、救援を呼びに行って欲しい。」

アシュリーに頼まれた斉木は、ダビと共に川を目指すが、先刻 渡った倒木の橋は姿を消していた。

やむを得ず集落へと引き返した斉木が目にしたものは… (叫び)




以上四編のほか最終話「祈り」の 計五編。

「ミステリーズ!」に掲載された「砂漠を走る船の道」「凍れるルーシー」の二編に書き下ろし三編を加えた、著者初の単行本である。


一話ごとに語りを変えてあり、「砂漠を走る船の道」は三人称、「白い巨人(ギガンテ・ブランコ)」はサクラの一人称、「凍れるルーシー」はスコーニャの一人称と三人称を交互に。「叫び」は再び三人称、最終話「祈り」は誰かの一人称 といった具合。


「砂漠を走る船の道」と「叫び」は、その国、その土地(あるいは部族)という条件に加え、その状況でなければ動機とはなり得ない動機による殺人事件で、真相を知れば驚くし、殊に「叫び」の結末には やりきれない気持ちにさせられる。

共に、日本人の常識や価値観の外で起きた悲劇である。
こうした価値観の違いに主眼を置いたミステリはかつて読んだことがなく、新鮮だった。

ただ、「砂漠を走る船の道」には、事件の真相とは無関係なところで叙述トリックが用いられているのだが、私はどうもそれが好きになれない。
叙述トリックそのものは嫌いではないが、この作品に限っては、P.20の斉木の台詞が 読者を引っ掛けてやろうという意図が見え見えで 白ける。

ネタバレするのは惜しいので詳細は伏せるが、読者と違って その場で全てを見ている斉木が そんなことを訊くのはおかしい。



「白い巨人」は、兵士セレッソについての推理や 叙述トリックには感心したが、肝心のアヤコが消えたことの真相がお粗末過ぎる。
トリックともいえないオチにがっくり。



五編を通して、いちばんゾッとしたのが「凍れるルーシー」

ミステリだと思って読んでたら、実はホラー(オカルト?)だったって話だろうか?

これまた叙述トリックや、時間の錯覚を利用しているあたり、紛れもなくミステリだと思うが…
動機となった出来事が、最後の一文を言葉通りに解釈するなら、そしてそれが冒頭で彼女が見たものだとするなら、これはホラーでもある。


ミステリと思わせておいて実はホラーだったなんてオチは、反則くさいし それで納得したくない。
ミステリならミステリらしく、どこまでも理詰めで解決して、読者があっと驚くような鮮やかな答えを提示して欲しかった。
いや、面白かったけどね…

(どなたか、この本を読んだかたで「他の解釈ができる!」というかたは是非教えてくださいm(__)m)




最終話「祈り」は、蛇足だと思う。

一話ごとに独立した短編で一向に構わないのに、あんなふうに無理やり纏めなくても。



あと、斉木という青年に個性がなさ過ぎて、探偵役というよりは狂言回しに見える。
七ヶ国語を操るというスキルが既に強烈な個性だと言われれば それはそうかもしれないが。

それにしたって、外見の描写もないし「七ヶ国語を操る雑誌記者。一年のうち百日近くを海外で過ごしている。」くらいしか、彼の個性を表現する言葉が見つからない。

外見も含め、もう少し読者を惹きつけるような個性のある 魅力的な探偵役にしてもよかったのに。

…ああ、だからせめて最終話の「祈り」で、斉木の内面を表現したかったのか。



いろいろ書いたが、全体的に見れば斬新で質の良い短編集だとは思う。


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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌

[2011/02/15 17:00] 梓崎優 | トラックバック(0) | コメント(2) | @
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コメント
--ミステリ・フロンティアかぁ--
こんばんは。
某シリーズにつぎ込んでおりますよ、ここ。
それにしても、これも面白そうですねぇ。
線引きできない世界っていうのは、どっちに転ぶかわからないところもあって、
読んでて楽しいですよねぇ。

探偵というと外見の魅力か、クセがありすぎるかのような気がしますね。
偏り過ぎるとミステリが薄く感じたり、なかなか満足度に到達するものに巡り合えないものですね。
[2011/02/17 03:12] URL | さくら #- [ 編集 ]
--さくらさんへ--
さくらさん、こんばんは。

創元社は新人のミステリ作家を育てるのに熱心なんですね~
ええ、この本面白かったです^^
でも物足りなく感じたのは、小学校の頃初めて読んだ推理小説がシャーロック・ホームズで、あれ以来探偵はカッコいい変人だっていう固定観念が出来上がってるから(笑)

確かに、探偵の個性があまりに強烈だとミステリの影が薄くなりそうですよね。
純粋にミステリを楽しむなら、トリックとか動機が斬新で面白ければそれでいいのかなぁとも思います。
[2011/02/17 18:56] URL | asagi #9kA7E2gM [ 編集 ]
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