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天の鹿
天の鹿―童話天の鹿―童話
(2006/04)
安房 直子スズキ コージ

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「――だからわたしは、長い長いさすらいから救われて、たった今、天の鹿になれたんだ」



鹿撃ちの名人 清十さんは、赤い月の夜、立派な角を持つ不思議な牡鹿に出会います。


「そこを通してくれたら素晴らしい宝物をあげる」と言う牡鹿の言葉に頷いた清十さんが連れて行かれたのは、はなれ山の頂にたつ「鹿の市」でした。


ほたる色の灯りがともる鹿の市では、たくさんの鹿たちがありとあらゆるものを売っていました。


おいしそうな金色の梨、きのこの雑炊、美しい刺繍の反物、珊瑚のかんざし、翡翠の帯どめ…。


牡鹿にもらった一枚の金貨で、清十さんが買ったのは、紫水晶の首飾り。
それは、もうすぐ嫁ぐいちばん上の娘、たえのものとなります。


清十さんには、「たえ」「あや」「みゆき」という三人の娘がいました。
もの言う牡鹿は、ある理由から、一人の娘を探しているのですが、それが清十さんの三人の娘のうちの誰なのかがわからないのでした。


その後、牡鹿は三人の娘たちを次々に鹿の市へ連れて行きます。
自分の背に乗せ、空を翔けて。


牡鹿が探していた娘は、いったい誰だったのでしょうか?


この物語でも、安房直子さんの描く情景はとても鮮やかで、目に見えるようです。


紺地に色とりどりの小菊がいちめんにちりばめられた反物。
その小菊が夜の山道にはらはらと零れ落ちてゆく様。


金の粉をふりまいているような秋の夕陽に、黄金に染まる山の木の葉。
その中を、娘を背に乗せ、駆け行く牡鹿。


どれをとっても、まるで美しい絵のよう。
それでいて、物語全体を包むのは、どこか切なく、胸が痛くなるような物悲しい空気です。


昔、清十さんに撃たれたのだろう牡鹿からは、恨みの感情は読み取れず、ただただ彼岸と此岸の挟間をさすらう孤独と哀しみだけが伝わってきます。


鹿の市にいる鹿たちもそれは同様で、この世の者ではあり得ない彼らから感じ取れるのは恨みや憎しみではなく、波の立たない湖面を見るような静謐だけが、そこには在ります。


季節はずれの桔梗の花をあふれるほど置いた店先で、「もう枯れてしまったはずなのに…」と不思議に思うあやに、仔鹿が言った「むかしの桔梗」という言葉が印象的でした。


「そう。これは、むかしの桔梗。むかし、ぼくたちが、もぐりこんで、かくれんぼをしてあそんだ、桔梗だよ」



かつて筑摩書房から出ていたこの本もまた、長らく絶版で、古本でもめったに出回ることなく、たまに見かけるネットオークションではいつも高額で取引されていました。
大好きな安房直子さんの本というだけでなく、鈴木康司(スズキコージ)さんの表紙絵が素晴らしく、書影を見ただけで一目惚れした私はずいぶんあちこち探し回りました。


ここ数年、嬉しいことに安房直子さんの作品は次々に復刊され、この本も現在はブッキングから復刊されて入手可能です。


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テーマ:児童文学・童話・絵本 - ジャンル:小説・文学

[2007/09/20 15:07] 安房直子 | トラックバック(0) | コメント(5) | @
<<きつねの窓 | ホーム | バンマツリ>>
コメント
--安房さんのお話は、確かにそうですよね。--
更新から、出遅れになってしまいましたが;
安房さんの本の事が、記事になってましたので。

このお話(あ、前回の本もそうですが;)は
読んでいませんでしたが、おっしゃるとおり
安房さんは、情景をうまく書かれる方だと
私も思ってました。

色とりどりであったり、その様子が見える様な
文体でしたし、教科書でも作品が取り上げられて
いましたが、とても印象深く残っていた事を
覚えています。

そんな訳あっての、好きな童話作家さんの1人
でしたので、なんか嬉しかったです(^-^)。


余談になりますが。。。

実は私も数年前、ブックレビューをWeb日記で
書いていまして、その中で安房さんの本を
紹介した事があります。
(ちなみに私が持っているのは、講談社文庫版2冊と
ちくま文庫版の1冊でして、どれも味戸ケイコさんの
表紙のものです。)

結局、元々長文屋なせいもあってか(^ ^;ゞ
そのレビューは続きませんでしたが、その時に
安房さんがお亡くなりになっていた事と
コレクションとして、復刊になる事を
とある読書サイトで、知った事を思い出しました。
[2007/09/24 17:02] URL | 未森 奏 #- [ 編集 ]
--↑あΣ(・ω・;||| 読み辛くなりました;;。--
行間を開けたつもりで、カキこんだのですが
送信したら、読み辛くなってしまってました;。

ごめんなさい(_ _(-ω-;(_ _(-ω-;。

[2007/09/24 17:11] URL | 未森 奏 #- [ 編集 ]
--未森奏さま--
こんにちは!

いえいえ、全然読み辛くないですよ。
先日はコメントへの丁寧なお返事をどうもありがとうございました!


未森さんも安房直子さんお好きだったんですね。嬉しいです!


教科書に取り上げられた作品というと、「きつねの窓」か「鳥」でしょうか?
どちらも名作ですね。

残念ながら、私の学生時代の教科書にはどちらも載っていませんでした。
あのお話で授業を受けることができたなんて、羨ましいです。


「天の鹿」は、素人が言うのは僭越ですが、設定を生かしきれていない部分とか、ちょっと説明不足な感がする部分もあるのです。
でも、それを補って余りある迫力と美しさに満ちていて、大好きな作品です。


安房さんがお亡くなりになったと知った時、「もう新しい作品は読めないんだな」と、若すぎる死が残念でなりませんでした。
[2007/09/25 13:50] URL | yukinousagi #- [ 編集 ]
--はじめまして。--
はじめておじゃまします。
ランキングサイトで目にしておじゃましてみたら、とても興味深い記事がたくさんあって、
わくわくしてしまいました。

「なおみ」復刊なんですね!

マリア・グリーペも大好きな作家ですし、もちろん安房さんも・・・。

今、毎月ある本屋さんから、安房さんのコレクションを一冊ずつ送ってもらっていて、今5巻に入っているところなんです。
ちょうど「天の鹿」も入っていたので、このスズキコージさんの絵本が気になります。

またぜひ、おじゃまさせてくださいね。
[2007/10/05 22:35] URL | フラニー #- [ 編集 ]
--フラニーさま--
はじめまして。

おいでいただいて、また、コメントまで寄せていただいて、とても嬉しいです!


フラニーさんのブログ、拝見しました。
「おんなのことあめ」とか「ブルッキーのひつじ」とか、好みの絵本がかぶっていて、それも嬉しかったです。


「ブルッキーのひつじ」
あんなに小さくて薄い絵本に、「大好き!」っていう気持ちがぎゅうっと詰まっているのが、すごいと思います。
ラストの一文、私も大好きです。


安房直子コレクションは、発売前から嬉しくて嬉しくて、予約で買いました!
安房さんの本は、古本でほとんど持っているのですが、選集には、今まで未収録だった作品やエッセイも入るということでしたので。
北見葉胡さんの絵は、可愛くて、「不思議の国のアリス」を思わせるような雰囲気が、素敵ですよね。


好きなお話はいっぱいありますが、私は、3巻の「風のローラースケート」の一連の作品が「天の鹿」に負けず劣らず好きなんです。


長々とすみません。
私も、またおじゃまさせていただきます。










[2007/10/06 14:32] URL | yukinousagi #- [ 編集 ]
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