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後巷説百物語
後巷説百物語 (Kwai books)後巷説百物語 (Kwai books)
(2003/12)
京極 夏彦

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「巷説百物語」「続巷説百物語」の 後(のち)の物語。

直木賞を受賞したというから、その当時は 前の二作を読まずに本書だけを読んだ人も少なからずいただろう。

しかし、それはあまりに勿体ない。

確かに この一冊だけでも面白いが、前二作の積み重ねがあるからこそ、万感胸に迫る。

これから読まれるかたは是非、「巷説~」から順に読んでいただきたい。




時代は江戸から明治へと移り変わり、薬研堀(やげんぼり)の隠居のもとには 今日も助言を求めて 矢作(やはぎ)巡査とその友人たちが集う。

九十九庵という庵を結び、自らを「一白翁(いっぱくおう)」と号するこの老人、かつては百物語開板のために諸国をめぐり 怪談奇談を収集していた 山岡百介の後の姿である。

百介は、あれから一度も江戸を出ることなく、今は「小夜」という遠縁の娘と共にひっそりと暮らしている。



元 南町奉行所見習い同心、現在は東京警視庁の一等巡査、矢作剣之進。

元 北林藩江戸詰め藩士、現在は貿易会社勤務、笹村与次郎。

元 徳川家重臣の次男坊、洋行帰りで今は無職、倉田正馬。

山岡鉄州に教えを受けた剣術使いで道場主、しかし今は専ら警察の剣術指南役、渋谷惣兵衛。



剣之進が奇怪な事件に遭遇し、知恵を借りるべく他の三人を呼び集める。

四人でああだこうだと言い合った挙句、一向に埒が明かなくて「そうだ、薬研掘へ行こう」というのがお決まりのパターンである。


彼らの話を聞いた一白翁こと百介が、昔 自分が体験した事件について語り、それをヒントに剣之進は事件を解決。

しかし実は百介の語った事件には裏があり、それは後に小夜にだけ明かされたり、あるいは与次郎に見破られて明らかになったりする。


「赤えいの魚」「天火」「手負蛇(ておいへび)」「山男」「五位の光」「風の神」


「赤えいの魚」は、「巷説百物語」の「柳女」と「帷子辻」の間、「天火」は「帷子辻」の後のお話である。

「手負蛇」の時間軸は不明。

「山男」は「天火」の後。

「五位の光」は「山男」の後、「続~」の「老人火」の二年前だと思われる。



第1話「赤えいの魚」は衝撃的だった。

「続~」の「死神」も怖かったが、「赤えいの魚」は 続きを読むのが怖くてページをめくるのをためらった末、しばらく休憩してしまった。


男鹿半島沖に浮かぶ幻の島。

常に不思議な靄に包まれ、年に数日 良く晴れた日に ほんの僅かの間 ある特定の場所からしか見ることが出来ないため、土地の者ですら その存在を知る者は少ないという。

更に、島の周囲の特殊な海流のせいで ある程度以上島に近づくと 急激に島に引き寄せられてしまい、二度と帰って来られない。

確かに日本なのに、どの異国よりも遠い まるで異世界のような島。

自分が今まで常識だと思っていた倫理が通らないということは、こんなにも恐ろしい。




しかし、百介の昔語りは 恐ろしいばかりではなく、郷愁に満ちてもいる。

自分が確かに「生きていた」と思える あの一時期。又市達と過ごした ほんの数年間。


老いますとね 昨日の数が多くなります。

(中略)

遠い昔の記憶(おぼえ)も昨日の記憶も、同じところに並ぶようになるのですなあ。
ですからね、より鮮烈で、より瑞瑞しい記憶の方が、目に付く。
そうした思い出が胸の内に浮かぶようになる。
それで、ああ自分は生きていたんだなと思うようになるので御座いますよ



百介が与次郎に向かって言った この言葉が 胸に残る。



「風の神」は、シリーズのタイトルでもある「百物語」がテーマであり、また シリーズ第1話での又市の仕掛けも百物語だったことから、シリーズの総括となる最終話にふさわしい。
(実際には本書の後にも「前(さきの)~」「西(にしの)~」の2冊が出ているが、時系列では「風の神」が最終話)


おおよそ想像通りだった小夜の素性や、百介が彼女を引き取った経緯が明らかになるにつれ、泣けてきてしようがなかった。


「続~」の「飛縁魔」で、又市が百介のことを「切り札」だと言ったが、まさか こんな未来を予想していたわけでもあるまい。

しかし、百介の仕掛けは、まるで又市の 最後の仕掛けだったようにも思えるのだ。



このシリーズには本物の妖怪や幽霊は登場しない。

又市なくしては どんな怪異も起こり得なかった。


なのに本書は、最後の最後に 「もしかしたら…」と思わせるような余韻を残して終わっている。


「続~」を読み終えた時ほどの喪失感はないが、やはりどうしようもなく寂しい。

私もまた、百介と同じように 百物語を終わらせたくなかったのだと思う。

後巷説百物語 (角川文庫)後巷説百物語 (角川文庫)
(2007/04)
京極 夏彦

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テーマ:歴史・時代小説 - ジャンル:本・雑誌

[2012/02/23 15:59] 京極夏彦 | トラックバック(0) | コメント(2) | @
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コメント
----
こんにちは(^-^*)/
3冊続き物なのですね。
怪談ものかと思ってました。
この方のは何度か例のシリーズを読んでたのですが、長すぎて一気に読まないと、始まりを忘れるので、遠のいてました。
短編集ならいいかな~
夏になったら読んでみます♪
[2012/02/26 17:13] URL | さくら #- [ 編集 ]
--さくらさんへ--
さくらさん、こんにちは。

久しぶりに本に夢中になりました^^
この頃は集中力がなくて、面白くないとすぐに読むのを中断してしまうので、読了までにすごく日数がかかるのですが。
このシリーズは一気に読んでしまいましたよ~

この本の「五位の光」と「風の神」は その別シリーズとリンクしているらしいので、私もそのうち読もうと思ってます。
でも、どれもこれも分厚いんですよねぇ…
確かに、さっさと読まないと伏線に気付かず終わってしまいそうです。

巷説は分厚くても短編集なので、その点では読みやすいですよ~^^
[2012/02/28 14:02] URL | asagi #9kA7E2gM [ 編集 ]
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