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村田エフェンディ滞土録
村田エフェンディ滞土録 (角川文庫 な 48-1)村田エフェンディ滞土録 (角川文庫 な 48-1)
(2007/05)
梨木 香歩

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「家守綺譚」とリンクしている「村田エフェンディ滞土録」
先に読んだのはこちらでした。
「小難しそうなタイトルだ」と、敬遠するのは勿体ない名作です。


綿貫と高堂の友人である村田の、土耳古(トルコ)留学記。
「エフェンディ」というのは、彼の地の言葉で、学問を修めた人に対する敬称だそうです。


村田が身を置く下宿には、女主人でイギリス人のディクソン夫人、身分は奴隷ながら皆に家族のように遇されているトルコ人のムハンマド、村田と同じ考古学者であるドイツ人のオットーとギリシア人のディミィトリス、といった人種も信仰も違う人々が一緒に暮らしています。
(※回教徒間の「奴隷」というのは、家事全般に勤め、ある時期が来たらかなりの額の年金のようなものをもらって家を出ていく、女中や下男の年季奉公のようなもの。異教徒の奴隷も同じ扱いだと、本文にあります。)



1899年 スタンブール

「ムハンマドが通りで鸚鵡を拾った。」という書き出しで物語は始まります。

この鸚鵡が実にいい味を出していて、

「悪いものを喰っただろう」
「友よ」
「いよいよ革命だ」
「繁殖期に入ったのだな」
「失敗だ」


などという言葉を絶妙のタイミングで発するものですから、たまりません。
しかもラテン語まで話し、レパートリーも徐々に増えていきます。



ヘジャーブで顔を隠した美しいムスリムの女性たち。
遺跡から掘り出された、青みがかった虹色の羅馬硝子(ローマガラス)。
金角湾に浮かぶ優美なカユク。

簡潔で美しい文章で綴られる百年前の異国の風情。


あらゆる人種・民族のるつぼのようなスタンブールで、時には下宿の居間で発掘について議論し、雪が降れば「世界大戦だ」と言って雪合戦に興じ、村田の彼の地での日々は穏やかに過ぎてゆきます。
異国の地に在るからこそ、村田は「自分が日本人である」ということをより強く意識し、世界と自分との関わりに思いを馳せ、自身の行動が日本の恥とならないよう努めるのでした。


「家守綺譚」と同じく、村田もまた、時折当然のように怪異に遭遇しますが、「そういうこともあるでしょう」と軽く受け流すディクソン夫人をはじめ、動じることのない下宿の面々に脱帽。(「家守綺譚」を読む前だったので、「なんで驚かないの?!」と、むしろ私は彼らの反応に驚きました。)



人種や宗教、文化の違いに、戸惑うことはあっても否定はせず、「理解はできないが受け容れる」という彼らの姿勢が、とても尊いものに思えます。
頭では解っていて、口にするのは簡単でも、なかなか実行できないことですから。


「私は人間だ。およそ人間に関わることで、私に無縁なことは一つもない」というディミィトリスの言葉が忘れられません。



突然の帰還命令により村田が日本に帰るまでは、味わい深くてちょっと変わった、でも、ただの留学日記だと思って読んでいました。
「やられた!」と思ったのは最終章。
まさかあの鸚鵡に泣かされるとは!


帰国後何年も経ってから、村田に届いたディクソン夫人の手紙は、涙なくしては読めません。
個人の力ではどうすることもできない世界の大きな流れに歯噛みし、あのスタンブールでの懐かしい日々は、かけがえのないものだったのだと痛感させられます。
帰国の前にディミィトリスが言った「忘れないでいてくれたまえ」という言葉が、別の意味を伴って甦ってきます。


後日、村田のもとに届けられた、あの幸せな日々の象徴とも言うべき鸚鵡は、言葉を失くしていました。
なのに、


――ディスケ・ガウデーレ(楽しむことを学べ)


村田が、かつてこの鸚鵡から教わったラテン語を囁きかけた途端、一言叫んだのです。
もう、涙がとまりませんでした。


是非「家守綺譚」と合わせて読んでいただきたい、おすすめの一冊です。


追記

「家守綺譚」には白木蓮から生まれたちいさな白竜が登場しましたが、この本にはサラマンドラ(火の竜)の宿るちいさな紅い玉が、村田の下宿の部屋の壁に埋まっていました。
村田がこれを日本に持ち帰り、それを見た高堂が非常に喜んで受け取ります。
火の竜と高堂にどういった関わりがあるのか、なぜ彼はそんなに喜んだのか、その辺りの事情をぜひ知りたいのですが…。
もしかしたら、そのうち「家守綺譚」の続編が出るのかなと、楽しみにしています。


家守綺譚 (新潮文庫)家守綺譚 (新潮文庫)
(2006/09)
梨木 香歩

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[2008/01/22 15:42] 梨木香歩 | トラックバック(1) | コメント(4) | @
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コメント
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はじめまして。

私も読みました。梨木香歩は大好きです。
本が好きなので、こちらのブログをリンクさせていただいてしまいました。
これからも楽しみにしています。
[2008/01/23 23:25] URL | mijakun #- [ 編集 ]
--mijaさま--
はじめまして。いらっしゃいませ♪


梨木香歩さん、いいですよね~。
「家守綺譚」がいちばん好きなんですが、「村田エフェンディ滞土録」は、相通ずるものがありながらもまた違った趣で、大好きです。


リンクありがとうございました!
私もおじゃまさせていただきますね。
[2008/01/24 12:44] URL | yukinousagi #9kA7E2gM [ 編集 ]
--紹介ありがとうございました☆--
こんにちは。
「家守~」とのリンクということで読みはじめたのですが、
トルコという国自体に、魅力を感じていたので、「楽しく学べ」という言葉が沁みました。
あの下宿で、鸚鵡も一人のエフェンディとして数えてよいと思いました。

「家守~」を先に読んだせいか、私は逆にそういう怪異に不慣れで、できるだけ遠ざけようとする村田の印象が違いましたね。

高堂が火の竜を喜んだのはなぜでしょうね。
それはまた別のお話なのかしら?
[2009/08/01 14:35] URL | さくら #- [ 編集 ]
--さくらさんへ--
TB&コメント、どうもありがとうございました!

読む順番が逆だと、確かに村田の印象が変わりますよね。
「村田~」を先に読むと、最後のほうに出てくる綿貫と高堂に「こいつら何者?!」とか思っちゃいますよ^^

>高堂が火の竜を喜んだのはなぜでしょうね。

ね~。知りたいですよね!
このお話にはきっと続きがあるんだと思います。
いつになるかわからないけど、本が出るのが楽しみ♪
[2009/08/01 17:02] URL | asagi #9kA7E2gM [ 編集 ]
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トルコのスタンブールに留学した村田。博物館に働きながら考古学の勉強をしている。下宿先は他国他宗教で、同じ勉学に没頭しながらも話題も考え方もそれぞれ違う。 そんな彼らの何気ない日常と会話、トルコの人の習慣。宗教。食べ物。 ときどきやってくる日本人や、友人...
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